出張するとき、災害対策を考えている人が増えています。
持って行くものはどうするのか等々。
それはそれで、とても良い事です。
でも、ぞれ以前に考えておかなければいけない事が山のようにあるのです。
このページでは、出張時の災害対策、被災を考えての対応について出張族の防災士が考えてみました。
出張にお出かけになる前に読んで頂ければと思います。
出張先の災害想定
出張先はどんな所か、おさえていない人は結構沢山いますね。
たとえば、名古屋から東京に行く人。
途中の静岡とか神奈川はともかく、出張先ではどんな状況が想定されるのか、知っておいた方が良いでしょう。
地方から上京される方で、銀座界隈が洪水の危険があると認識している方がどれだけいるのか…
私が3.11以前、名古屋に出張した際、名古屋駅近辺は洪水で大変な事になると想定されているという話をしたところ、地元の方に「あり得ない」と一蹴されたことがあります。
その後、名古屋駅は被害を免れたものの、愛知県は東海豪雨で大変な事になっています。
台風が最接近している状態で、東京・港区の新橋の地下の飲み屋に先輩たちが入っていくのを唖然として見送った事もあります。
何も考えていないと、洪水や高潮の可能性があるのにわざわざ地下に入っていくという現実があるのです。
泊まる宿は
泊まる宿、色々あると思いますが、予算の都合ですごく安い宿に泊まると、耐震性が無い宿だとペチャンコになる可能性もあります。
そうしたら、その後の対策をいくら頑張っていてもジ・エンド
どんな宿に泊まっている?
私の場合は、基本的に同じ系列の宿が多いです。
クーポンがあったり、色々お得なのもありますが、避難する際、同じような構造の方が逃げやすいと思うので。
出張や旅行で利用する宿泊施設は、被災時に私たちの命や安全に大きな影響を与えます。
特に、日本は地震や台風などの自然災害が頻繁に発生する国であるため、宿泊先の選択には慎重な判断が求められます。
たとえば、夜台風が迫ってくるのが分かっているのに、わざわざ洪水が想定されている場所に泊まる必要はなく、少々不便でも安心できる宿を探すなど、意外と簡単にできます。
宿泊施設の構造と防災性
まず、宿泊施設の構造や設計によって、地震や火災時の安全性が大きく異なります。一般的に、日本の建築基準法は厳格で、特に耐震基準が高い水準で求められていますが、建築年や施設の管理状態によって、実際の耐震性や防火対策の効果には違いがあります。
古い宿泊施設の危険性
1981年に日本の耐震基準が改正され、それ以降の建物は新基準に基づいた耐震性が求められています。このため、1981年以前に建設された宿泊施設は耐震性が低く、大きな地震が発生した際に倒壊や部分崩壊のリスクが高くなります。宿泊する施設の建築年を確認することは、まず一つの基本です。例えば、出張で古い旅館や民宿に泊まる場合、最新の建物と比べて被災時の危険性が高いことを認識しなければなりません。
高層ホテルと低層建物の違い
宿泊先として選ばれることが多いホテルには高層建物が多く、これらは一般的に耐震設計が施されています。しかし、高層階に泊まると、地震発生時の揺れが増幅される「長周期地震動」の影響を強く受けます。過去の地震災害で高層階にいた宿泊者が非常に激しい揺れに遭い、恐怖やパニックに陥った例も報告されています。対照的に、低層の建物は揺れの影響を比較的受けにくいものの、地震時に倒壊のリスクがある場合には早急な避難が求められることが多いです。
木造建築と鉄筋コンクリートの違い
旅館や民宿など、木造建築の宿泊施設も多くあります。木造建築は比較的軽量で、倒壊のリスクが低いという利点もありますが、火災に弱いことがデメリットです。
一方、鉄筋コンクリートの建物は火災に強く、耐震性も高い一方で、火災時に煙がこもりやすく、避難経路の確認が重要です。
災害時の避難経路と非常口
宿泊施設の避難経路や非常口の位置は、被災時の安全確保において非常に重要です。建物内での避難ルートが確保されていない場合、地震や火災が発生すると安全に避難することが困難になります。
非常口の位置確認の重要性
防災の観点から、チェックイン後に非常口の位置を確認することをお勧めします。
特に、初めて泊まる施設では、非常口や避難階段がどこにあるのかを覚えておくことが大切です。ホテルの高層階に泊まる際は、エレベーターが使用不可となる可能性があるため、階段の位置や複数の非常口を確認しておくとよいでしょう。
実際の災害時には、暗闇や煙で視界が遮られることが多いため、非常口の数と場所を事前に把握しておくことで、迅速な避難が可能になります。
火災時の避難の難しさ
ホテルや旅館では、火災が発生した場合に避難の困難さが増します。特に大規模な施設では、煙が広がりやすく、避難ルートが長くなるため、迅速な判断が求められます。煙が上昇する性質があるため、高層階に泊まっている場合は避難が難航する可能性が高くなります。こうした点からも、低層階に泊まることが安全性の観点では望ましい場合もあります。
出張などで「ホテルは夜に寝に帰るだけ」とかいう場合は、ホテル側に低層階をお願いしてみるのも良いでしょう。
旅行などで高層階の展望を考えるのでなければ、低層階の方がコンビニに行くのも便利です。
災害発生時に重要な宿泊施設の安全設備
安全設備の有無や状態も、宿泊施設の被災リスクを大きく左右します。
ちなみに、私は避難経路にモノを置いてあるホテル、避難梯子が故障しているホテルには二度と泊まりません。
ここでは、宿泊施設の安全性を確認するためのポイントをいくつか挙げます。
スプリンクラー設備の確認
火災時の消火設備としてスプリンクラーの有無は重要です。
スプリンクラーが設置されていることで、火災発生時に自動で水が放出され、火災の拡大を防ぐ効果があります。
高層ホテルや大規模施設には義務付けられていることが多いですが、小規模な宿泊施設や古い建物には設置されていないこともまれに有るようです。
滞在先にスプリンクラーがあるかどうかを確認することは、火災時の安全性を高める一つの手段になり得ます。
非常放送設備
災害時には、ホテルや旅館の非常放送設備も重要です。停電時でも利用可能な非常用電源が備えられているかどうか、また、避難誘導の放送が迅速に行われる体制が整っているかを確認することが安全確保に繋がります。特に外国人宿泊者が多い施設などでは、多言語対応の放送が行われることが理想的です。
非常用照明と誘導灯
避難路を示す誘導灯や非常用照明の状態も、被災時に安全な避難を行う上で欠かせない設備です。
特に火災や地震で停電が発生した場合に、誘導灯が点灯しているかどうかが重要です。
照明がない場合は暗闇で非常口の位置が分からず、避難が難しくなるため、事前に非常用照明や誘導灯の設置状況を確認することをお勧めします。
緊急時の行動計画
宿泊施設で被災した場合に備えた行動計画も、安全確保には欠かせません。
ここでは、地震と火災それぞれのケースにおける具体的な行動指針を挙げます。
地震発生時の行動
地震が発生した場合、まず頭を保護し、揺れが収まるまで安全な場所で待機することが推奨されます。宿泊先の部屋のテーブルやベッドの下などを避難場所として利用するとよいでしょう。揺れが収まった後は、エレベーターを使わずに非常階段を利用して避難することが重要です。また、余震が発生する可能性もあるため、素早く状況を把握し、避難の準備を整えましょう。
火災発生時の行動
火災が発生した場合は、煙の有無を確認し、煙を吸い込まないように姿勢を低くして移動することが推奨されます。
煙が充満している場合は、濡れたタオルなどで口元を覆うことで一酸化炭素中毒のリスクを減らすことができます。
また、部屋のドアを開ける際は、ドアノブが熱くなっていないか確認し、火が回っている場合は部屋にとどまるか、窓から外に向けて救助を求めるなどの行動が求められます。
まとめ
宿泊施設の選択はただの便利さや快適さの問題ではなく、命に関わる選択でもあります。安全で安心できる滞在を確保するために、施設の選択や事前準備の重要性を改めて考え、災害に対する備えを万全にしておくことが大切です。
非常口確認は常識
消防関係者と泊まると分かりますが、彼らは宿に着くと非常口をきちんと確認します。
消防士は仕事柄、様々な火災現場を目の当たりにし、建物の構造や非常口の位置がいかに避難に影響を与えるかを熟知しています。
この経験から、自身の安全を守るだけでなく、必要な場合には他の人々を安全に避難させるためにも、宿泊先での非常口確認は欠かせない行動となっているのです。
こうした小さな習慣が、万が一の時に大きな差を生むことを、私たち消防士は経験から知っています。
一般客である私たちも、普段から泊まった時は非常口の確認をしておきましょう。
出張の時期は?
いつ出張するのかで、対応する持ち物が変わってきます。
冬なら使い捨てカイロを持つなど、季節に合った準備をしましょう
夏場の被災対策
出張先で被災した場合、歩かざるを得ない事を想定すると、水は必需品です。
私は出張の際、500mlのペットボトルを必ず持ち歩きます。
空になっても持っています。
ちなみに、水だけを延々と飲むと、塩分が足りなくなって詰みます。
空になったペットボトルが無いと、水をもらっても飲む分しか確保できません。
塩分補給も忘れないようにしましょう。
ちなみに、下の梅タブレットは軽くてお勧めです
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モバイルバッテリー
最近の被災地では、スマホのバッテリーが切れて長蛇の列になったりしています。
予備のバッテリーは持ち歩いた方が良いでしょう。
モバイルバッテリーがあれば充電自体はできますが、いずれ電気が足りなくなることも予想されます。
自宅での被災等と違って、出張先で電気が通ったから充電できるとは限りませんので、
自家発電できる手回し充電器やソーラーパネルも検討しておきましょう。
太陽光発電は天候に大きく左右されますので、出張を想定するなら持ち運びが出来て軽め、防水系のものがお勧めです。
インソール
大規模災害に巻き込まれたら、交通機関の運行は望めません。
最後は自分の脚が頼りです。
歩行できないと、困った事になるのは想像に難くないですよね。
で、普段から自分に合った靴を履くこと。
そして、インソールにお金をかける事をお勧めします。
ちなみに、陸上自衛隊では数十キロの荷物を背負って数十キロ歩きますが、インソールの重要性を語る隊員も多いです。
もちろん、靴も自分に合ったものを普段から履くようにする方が良いでしょう。
靴擦れすると困ってしまうので、絆創膏やベビーパウダーなども持っていると役に立つかもしれません。
3.11では首都圏でも電車が止まり、女性が徒歩で帰宅する際「もう歩けない」って泣いていました。
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出張の際は、大規模災害で歩行できないと困ってしまうので、歩きやすい靴とインソールで出かけるのが理想です。
現金の用意を
最近、電子マネーでお買い物をする人が増えています。
でも、被災時は停電の可能性も高く、決済システムが機能していない可能性が高くなります。
要するに、被災地では現金が無いと何も買えません。
避難所でボランティアや自衛隊の人達が炊き出しなどをしてくれるのは、基本的に状況が落ち着いてから。
落ち着くまでは人命検索等で必死に活動していますので、当てにする事はできません。
現金を用意する際は、必ず小銭を用意しておきましょう。
一万円札しかなく、お釣りが無い場合、どうにもなりませんので。
まとめ
最近、防災関係で出張に持って行くアイテムを買う人が増えています。
でもその前に、やはりキチンと自分が行く場所を確認するいこと。
災害に巻き込まれない工夫を出来る範囲で進めましょう。